ともに大阪のベンチャーメーカーとしてインテリアライフスタイル2017に出展したロンド工房https://rondowerkstatt.com/とうるわし(オオウエ)http://uru-washi.com/による特別企画。「ベンチャーメーカーにとっての展示会とは」というテーマについて、それぞれのブランドの代表であるロンド工房の荒川とうるわしの大上による対談を行いました。全4回の連載予定。1-2回はロンド工房、3-4回はうるわしサイトで掲載します。

第一回目のテーマは「展示会に出たきっかけと選び方」です。

その1 「展示会に出たきっかけと選び方」
その2 「ベンチャーメーカーとブランディング
その3 「気になるお金のはなし。
その4 「大切なのはコミュニケーション

注意事項
対談内で出て来る展示会の条件や金額などは、あくまで個人の体験に基づく感想であり、毎年変わる可能性があります。正確な諸条件は各展示会運営まで直接ご確認ください。

インテリアライフスタイルへの出展を決めたのは、あのメーカーからの助言があったから

あらかわ
ではよろしくお願いします!
おおうえ
よろしくお願いします。インテリアライフスタイルって何年か出されているんですよね?
あらかわ
二回目です。ロンド工房としてメーカー事業をやろうと思った時に、年に一回くらいは、東京の大きな展示会に出したかったんです。どれを選ぶかという時に、最初はギフト・ショーだったんですよ。メジャーだし。また、たまたま前職の時にギフト・ショーで大口の注文が決まった実績を見ていたので。

おおうえ
前職は手帳のメーカーさんでしたよね。
あらかわ
そうですそうです。最初にギフトショーに出た時は、ベアハウスの阿部さんと、icco nicoの坂本さんと出ました。みんな商品点数が少ないときだったから、助け合って出てた感じですね。
おおうえ
それめっちゃありやと思います。
あらかわ
うちその時、上代150円のポストカードしか無くて!ヤバイと思ってクリーティングカードとカードリッジを作りました。サンプルも手切りで!当時レーザーカッターも持ってないし。
おおうえ
それが4年前くらいですか?
あらかわ
そうですね。2014年?3年前かな。
おおうえ
反応はどうでしたか?
あらかわ
3社合同でしたし、うちもやっと商品が出始めたばかりで。まぁこんなもんかなという感じでしたが、費用対効果で考えた時にちょっと合わないなと思って翌年はブックフェアに出ました。

おおうえ
ブックフェアは良かったんですよね?
あらかわ
良かったです。即売会もやりましたから。ちょうど「えとしおり」を発売してすぐだったから。3日間で200枚以上売れたし。出版取次の方も来てくれたりしましたからね。
ただ、もうちょっと違う種類の顧客と繋がりたいと思った時にインテリアライフスタイルという展示会を知って。ハイモジモジの松岡さんが前年に出てらっしゃったから聞いてみたら「すごくいいよ!」と仰っていただいて。それで出ることを決めました。
  
おおうえ
じゃあ去年はハイモジモジさんも出られてたんですね?
あらかわ
それが出てないんですよ!裏切られた!
おおうえ
裏切られましたね(笑)
あらかわ
まぁ勝手に私が一緒に出ると思い込んでただけなので(笑)。インテリアライフスタイルでは、毎年ブースには遊びに来てくれるんですよ。

ブランディングのための展示会、単独出展のこだわり

あらかわ
元々、自社のブランディングに迷っていて。ロンド工房の商品は、色々な作家さんとコラボしてアートグッズを作っていたり。印刷業のままの名前だし。どこかで一本ブランドっていう筋を通したいなと思っていて。その時ちょうどdünnが出始めで。カードリッジだけあったから。
ブランディングのための展示会をやろうと思った時に、インテリアライフスタイルはぴったりじゃないかなと思いました。
おおうえ
そういうの、インテリアライフスタイルのお客様は好きですもんね。
あらかわ
インテリアライフスタイルに申込んだ時はまだカードリッジしか無かったから、そこから必死になって商品を5点作りました。
おおうえ
デザインは荒川さんがやっているんですか?
あらかわ
全部自分です。企画自体は、オフ会や友人と話をしている時に出てきたものが多いですね。てちょけんの時とか。それで、昨年出て、dünnというブランドを一本立ちさせることができたから今年も出ようと思いました。
おおうえ
2年連続出たのは初めてですか?
あらかわ
ブックフェアも2年連続出ましたけれど、そもそも単独で展示会に出るのがインテリアライフスタイルが初めてでしたからね。
おおうえ
ああ、そうか。
あらかわ
単独で出るのってすごく大事やなと思って。
おおうえ
そうですね。
あらかわ
共同は共同で良いこともいっぱいあるんですけどね。どこかで甘えてしまうというか、妥協してしまうというか。年に1回くらいは、しんどい思いしてでも単独で出るのって大切やと思いましたね。
おおうえ
でも、単独だと金銭面は大変でしょう?決断したのはどんなポイントでした?
あらかわ
やっぱり1年やってみて、dünnというブランドに掛けるしかないなと思ったし。
おおうえ
投資ですよね。ここでちゃんと知ってもらえると後々売上を立てやすいやろうってのもあるし。
あらかわ
年間掛けられる売上と広告費の割合ってあるじゃないですか。やっぱりインテリアライフスタイルってもろもろ合わせるといい金額になるし。だから今年は早いうちから計画して、この時期にこのお金を使いますよっていう計画をして準備しましたね。
おおうえ
何か目標って設定されていましたか?名刺の獲得枚数とか。
あらかわ
カタログの配布枚数を設定していました。手渡しで。あんまり興味のない方に名刺もらうのも気が引けて。本当は設定したほうがいいんでしょうけどね。結局600部弱くらいを配布しました。
「カタログしか手元にないんですけど」と言って電話してきてくれた方もいらっしゃったので、とにかく認知を広げるという意味では良かったのかなと思ってます。

安く出すという制約からスタートしたアクティブクリエイターズ

おおうえ
僕は、2014年の2月に初めてギフト・ショーに出しました。当初は本当にお金がなくて。とにかく安く出せるブースを出そうと思ってました。

あらかわ
ギフト・ショーはなぜ選んだんですか?
おおうえ
アクティブクリエイターズっていう良いブースがあるんですよ。福嶋さん(offのデザイナー)が知っていて。結構良い作家さん、デザイナーさんの登竜門的な場だと教えてもらって。
あらかわ
展示会というビジネスの場があるとか、そこで商売をするっていうイメージはありました?
おおうえ
いや、展示会に出す会社ってイケイケやなみたいな。憧れの場でしたね。うちは関係ないみたいな。
あらかわ
印刷業界ってそういうところありますよね。
おおうえ
ありますね(笑)あんなところ出したって役に立たないみたいに言われてたりとか。そんなにすごく期待していたわけじゃないんですけどね。
ちょうど補助金もあてがうことができたので、半額補助してもらって、宿代込みで15万くらいの持ち出しで抑えられるなら失敗してもいいやと思って。
でもすごく良かったんですよ。Casa Brutusにも載せてもらったりとか。
あらかわ
え!すごい!
おおうえ
それが2014年の2月ですね。
あらかわ
アクティブクリエイターズっていうブースは、デザイナー界隈では有名なんですか?
おおうえ
デザイナー同士の同世代のネットワークでは有名みたいですね。福嶋さんに聞いただけなんですけど。
そうだ。福嶋さんはプロダクトデザインで、インテリアライフスタイルアワードも取られたんですよ!
あらかわ
めっちゃすごいですねそれは!
おおうえ
先週トレたまにも出てらっしゃって。
上昇志向があって、実力もあるデザイナーさんなんで。福嶋さんが言うなら間違いないやろくらいの感じで出たんですが。僕としてはコストパフォマンスがすごく良かったんで。安いブースなのに、新しいものを探しているバイヤーさんはそのゾーンから回り始めたりもされてるみたいですよ。
あらかわ
大上さんの会社は、完全なBtoCじゃなくて本業の和紙のビジネスにも繋がるという意味ではBtoBも狙ってますよね。
おおうえ
2014年の時なんてまさにそうですよね。
あらかわ
ギフト・ショーって、BtoBとBtoCがどちらもいらっしゃるじゃないですか。
おおうえ
あ、わかるわかる!すごいわかります。ネタを探しに来てるんやろうなって。
あらかわ
SP(セールス・プロモーション)的な方ね。すごくいらっしゃる。だから、BtoB、btoCを両受けできるんやったらすごくアリな展示会ですよね。
おおうえ
ただ、ブースに人数がいないとなかなか対応できないんですけどね。
おおうえ
その次は9月に出して、翌年の2月は「ててて見本市」に出ましたね。だいたい三日間15万くらいのブースにばかり出していて。


あらかわ
その予算は決められているんですね。
おおうえ
うちの場合は特殊というか、父に怒られないように見かけ上の数字を下げたいというか…。
5万を毎月10回払う方が50万1回払うより目立たないじゃないですか。年間予算とかうち立ててないので…。
あらかわ
すごい判断基準ですね(笑)
展示会に出るようになって情報が入ってきたから「ててて」を選んだんですか?
おおうえ
そうですね。「ててて」はすごく良かったです。個人や企業内のデザイナーさんが出てらっしゃったり。セルフメイドの展示会という雰囲気ですね。
あらかわ
会場は竹芝でしたっけ?
おおうえ
前は日の出のTABLOIDでやってたんですが、最近は東雲でやるようになりましたね。ギフト・ショーと日程を合わせて集客を図っているのは変わりませんが、今回はギフト・ショーが2週に分かれたから日程を決めるの大変そうでしたね。
あらかわ
来場者はどんな層がいらっしゃるのですか?
おおうえ
アクティブクリエイターズと似てますよ。ありきたりじゃないデザインを求めている小売店さんというか。
アクティブクリエイターズを見て、「ててて」という方は本当に多かったですね。どちらかに出しておけばいいかな、という感じはしましたね。

到着したら壁も床も何もない・・・!

おおうえ
そして、2015年の9月はまたギフト・ショーに戻って。
この時は2ブース抑えたんですよ。

あらかわ
アクティブクリエイターズって、創業からの年数とか制限は無いんですか?
おおうえ
無いみたいですね。僕らも最初はあると思ってたんですけど。
2015年の時はちょうど和紙田大學伊勢海老の祝儀袋メガネ拭きを出した時期で。この時にけっこうお客様が増えましたね。
あらかわ
半年に一回は出てますよね。全部単独ですか?
おおうえ
全部単独ですね。2015年の9月までは補助金も出ていたのかな?その半年後の2016年2月もギフト・ショーに出ました。そして7月にはISOTにも初めて出展しました。
あらかわ
そうですか!ISOT出てらっしゃったんですね。
おおうえ
出たんですけど、その時に取った補助金がBtoBに限られた用途だったんで「オンデマンド向きの和紙ありますよ」みたいな打ち出し方をしてました。
ここが一番予算をかけた割に大したこと無かったというか。
あらかわ
(笑)ISOTの時は費用はどれくらいだったんですか?
おおうえ
ISOTは確か40万くらい掛かってますね。
ISOTで失敗したのが、40万円出して、スケルトンだったんですよ。壁も地面も無いという。ギフト・ショーだったらそれなりに壁も絨毯も引いてあったから、ISOTに素のままの申込みをしたら床は打ちっぱなしだし、壁はボロボロの板みたいな状態で。  
あらかわ
ええ!マジですか!
おおうえ
こんなんで出せるかいなと事務局に行ったら、パッケージに入ってないから当然ですと言われて…。
あらかわ
それいつ気付いたんですか?
おおうえ
行ってから気付いたんですよ。だからその場で18万払って壁を立ててもらって。それで壁と絨毯が敷かれたという。それで大きさは3m×3mですね。

あらかわ
ISOTってそんなに高いんや…
おおうえ
たぶん当日料金やから高かったのもあるんでしょうけど。ちゃんと資料を読み込んでなかった僕が悪いんですけどね…。あと、B to B向けに出したっていうのも厳しかったですね。ただその時に文具関係の方と名刺交換はできたんですけどね。
あらかわ
当時NEXTSwitchさんみたいなブースがあれば良かったですよね。
おおうえ
良かったでしょうね。ただ僕、共同出展に抵抗が無いわけではなくて、
ずっと自分たちで出してきたから、仲良くやれるかなとか。売上絡むとどうなるのかなとか。費用の配分をどうやって分けるのかとか。出展位置によって反応も変わるだろうし、大変だろうなと。
あらかわ
そうですね。きっと大変なところもありますよね。
おおうえ
そして今年の6月のインテリアライフスタイルに至ると。補助金が一段落したので少し空けて、ですね。

ユーザーと接する場として有効だった「紙博」

あらかわ
初めて1年空いたんですね。その間に、紙博も出てらっしゃいませんでした?
おおうえ
ああそうですね。あれは大きかったですね!


あらかわ
「ててて」より規模感は大きかったんじゃないですか?
おおうえ
規模感は「ててて」より圧倒的に人が来ていましたね。ただ、紙博は完全にユーザー向けの展示会なので。「ててて」はバイヤー向けの展示会なので、一人ひとりの質が違うというか。
あらかわ
層が違うという感じですね。
おおうえ
そうですね。ただビックリしたのが、紙博ですごい好きになったと言ってくれた方が実はバイヤーで、インテリアライフスタイルに来てくれたとか。
Iのバイヤーさんが個人的に気に入ったからと言って来てくれたりとか、Hのバイヤーさんも紙博に来てくれてたみたいだし。 
あらかわ
バイヤーだけど、ユーザーでもあるんですね。
おおうえ
それは感じましたね。話題になっている、自分の担当している商材だったら気になって行きますからね。「紙博で見たよ」という効果はすごいありましたね。
あらかわ
何千人と来てましたよね?
おおうえ
二日間で1万人でしたから。べらぼうに来ましたよね。
あらかわ
ああいう所に来る方って隅から隅までみたい方が多いだろうから、少なくとも7-8千人にはオオウエなんぞやっていうのが伝わっているってことですよね。それってすごいことですよね!
おおうえ
よく聞いたのが、買いたかったのに人が多すぎて買えなかったみたいな方がおられたみたいで。売上以上に効果があったんじゃないかなと思います。アクセス解析とかしていても未だに紙博のホームページ経由でうちに来ていますしね。紙博は本当に良いチャンスでしたね。年末にも京都であるみたいなので、出展する予定です。
その1「展示会に出たきっかけと選び方」

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株式会社ロンド工房 クリエイティブディレクター。商品の企画、製造、営業を行っている。てちょけん会長、ステラボP、K3事務局長など。