ロンド工房でバリバリ活躍中の営業部長・荒川と、その下で修行中のだいたい鳥の話しかしない営業・むーすが、自社商品について語り合ってみました。
今回は第一弾。2016年8月に発売以来好評を博している「dünn one pencover(デュン ワンペンカバー)」と、太軸タイプの万年筆需要に対応した2017年10月発売の「dünn one pencover BOLD(デュン ワンペンカバー ボールド)」について、まずは二人が万年筆を持つに至った経緯から話し合いました。
今回は第一弾。2016年8月に発売以来好評を博している「dünn one pencover(デュン ワンペンカバー)」と、太軸タイプの万年筆需要に対応した2017年10月発売の「dünn one pencover BOLD(デュン ワンペンカバー ボールド)」について、まずは二人が万年筆を持つに至った経緯から話し合いました。
荒川×むーす 万年筆対談
【その1】万年筆初心者におすすめの一本って?買って気づいた、こんな「あるある」も
【その2】万年筆用カラーインクと化粧品の共通点とは?
そもそも、万年筆を使い始めたきっかけって?
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。まず…いいんですよね、いきなり始めて。ワンペンカバーを作る上で、万年筆を入れるっていうので、万年筆をいつから使い始めましたかって…。
唐突やな。
えー(笑)いやもう入り方わからないんですよ。
いいよそんなんで。万年筆…万年筆っていつから使ってた?
私は大学に入るときに書道の先生にPERKER(パーカー)のSONNET(ソネット)をもらって、それが初めて。
ふーん。すごい優しい先生よね。
そうなんですよ。三万円くらいするのに…っていうのは、後でこっそり調べたんですけど。わあ、こんないいのくれてはるってびっくりしました。
へえー、すごいね。俺は最初何やったっけなあ。1本目はLAMY(ラミー)やってん。覚えてる。いや、違う。その前にPLAISIR(プレジール)を関西どや文具サミットのクリスマス会の交換プレゼントでもらってん。それが1本目やわ。プレジールの緑の蓋するやつ。初めて手にしたのがそんなオフ会で、周りはインクとか万年筆が大好きな人ばかりやったし、マニアの世界があるんだなとか、ハードルが高いなって感じたね。
あー、確かに。大学に行ってた時でも「万年筆は持ってみたいけどまだいいかな」みたいな声は結構ありましたね。やっぱりなんかハードル高い、みたいなイメージ。プレジールとかカクノみたいに千円台のものもあるのに。まだいいかなって。
五年ぐらい前かなー、俺が持ったのって。でもそれからかなあ。とりあえず1本もらってみたっていうのと、Kobe INK物語で有名なナガサワ文具センターさんといろいろお仕事をする機会が多かったから…カラーインクっていい物なのかなあと思って、まずインク瓶から買ってみた。プレジールは入れられへんからさ。あれカートリッジ式やから。
あー、そうですね。
ほんでインク瓶を試しに買って、じゃあ入れるものなんか買わないとなと思って、ラミーを買った、って言う順番。サファリやったかな?
それがあの緑のやつ。
そうそうあの黄緑のやつ。そんなにみんなすすめてるんやったらいいのかなと思って買ってみたという感じやね。
万年筆は万年筆を呼ぶ。一本買うといつの間にか他のペンも買っている不思議。
今は万年筆は何本か持ってる?
持ち歩きは最近してないですね…。でも一応ソネットをいただいた後に万年筆っていいなって思って、ELABO(エラボー)を自分で買いました。阪急さんの10階の万年筆売場のところで。
それは仕事始める前?
大学生の時に持ってた気がするんで…、そうですね。なんか、目覚めて。
なんか目覚めて(笑)
買おう!と思って。なんか欲しくなって。あ、それで買いに行く前にナミキファルコンのめっちゃカリカリいわしながら書く動画を見たんですよね。それが決定打でした。
何?ナミキファルコンって。
ペンの名前で…ファルコンて名前やった気がするんですよ、確か。すごいなめらかにカリグラフィーを書いてる動画があって。
ふーん。
多分ペンドクターの人には悪名高いかなと思うんですけど、ペン先に負担をかけてぐいぐい書くんで、それを真似してペン先をつぶしてる人が多いらしくて。それと同じタイプなんかな。エラボーっていうのがあって。
うんうん。あーこれかエラボー。
はい。で、めっちゃ音が気持ちいいやつがあるんですよ。もうひたすらカリカリカリカリ。再生数めっちゃあると思いますよ。
それを見て、ほんとに音が気持ちよくて。ああ、これにしようって思いました。
音から入るんや。
なんか、私は筆記用具が好きっていうか、字の形とか、例えば鉛筆とかのトントントントンていう音とかそういうところが、感覚的なところが好きなんかなって。
これは何、やっぱり書道やってるから見てたの?この動画。
これはなんか出てきたんですよ、ネットサーフィンしてた時だったかな。まとめサイトとか見てたらいろんなジャンルまとめてあるじゃないですか。で、この動画が見ててすごい心地良いみたいな。それで見てみました。ペン先が柔らかくて、とめ・はね・はらいがきっちり表現できそうに見えて。書道やってるんで、その辺を表現できるペン先がいいなと思えました。
何もない時にそういう動画見てるって大概オタクやね(笑)
一応書道やってるから、きれいな字とか人が書いてるところを見るのは好きなんで。
なるほどね。
で、買ってみたんですよ。
買ってみた、って結構いい値段するよね。
二万五千円くらいだったかな。プラスチック樹脂の本体と金属の本体があって、ちょっと重みが欲しかったんで金属の値段が高い方にしました。
へー。そんな大学生おるんや。
そんなの、身近にもっとすごい人いるじゃないですか(笑)
確かに(笑)
男女で万年筆の購入動機に違いあり?
自分で買った高級なものはその1本。他に買ったのはkakuno(カクノ)が3本。プレジールも1本買って…。いろいろ試してるんですけど、書き心地が好きじゃなかったら全く触らないんで、結局あんまり使ってないのが多いですね。
カクノは何用?日常用?持ち歩いてるの?
カクノは、最近だったらCartes de Coloriage(カルトドゥコロリアージュ)をやってたから、そのインク用もあったんですけど、基本はカラーペン的な使い方です。安いし、インクもちょこちょこ買ってたら溜まってきてたんで、いろいろ使っちゃえみたいなノリで。安かったら割とカジュアルに使えるんで、まあいいかなって。書き味もすごくいいし、って言う感じですね。
なんか使うために持つよね。女の人って割とそうよね。
目的が明確な感じがしますね。
多分男性にとっての、montblanc(モンブラン)とかになってくると…就職祝いとか昇進祝いとか、なんかちょっと箔をつけるためのアイテムみたいになってくる。
そうですね。胸ポケットからスッて出てきたときに、「おっ、それモンブランですね。」みたいな。
そうそうそう。全然ジャンルが違う文具クラスタじゃない人でもモンブラン持ってる紳士は結構多かったりするからね。男女で使い方が違うんや。
そうですね。
でも俺そういう意味でスーベレーン買ったかなあ。箔をつけようと思って買った…違う、臨時収入が入ったから買ったんや(笑)
なんでその時に万年筆を選んだんですか?
いや、使い道として美しいなと思ったから。そのお金の使い道として(笑)
文具メーカーですしね。
そうそう。まあ1回買ってみようと思って。みんないいって言うからさ、万年筆。言っても安いものしか持ってなかったから。じゃあちょっと高いの買ってみようかなと思って、「高いの買ってみたいんですけど、どれがいいですか。」って、仲のいいお店で聞いたらこれって言われた。予算三万円でって言って。じゃあスーベレーンにしてくれたっていう感じやね。まあまあ、なるほどと言う感じで。でもちょっと失敗したかなと思ってるのは、ペン先がわりと太めやったことかな。太めって言ってもFやと思うねんけど。
海外のやつって太いんですよね。
そうそうそう。だから手帳には使えないよね。手帳って結構文字が細かくなるから。手帳に使わないとなったらいよいよ使うシーンがあんまりなくって。サインすることも少ないし。結局その後に日常用にもう1本、カヴァリエのブルーの軸のやつを買って、それを今一番使ってるかな。
やっぱり、ちょっと安価な方が使いやすいですよね。いい意味でも悪い意味でもかしこまりすぎて肩に力が入っちゃうんで、万年筆って。すらすら書けるんで力自体はいらないんですけど、書く時に身構えてしまうみたいなところがあるから。
でもそれがいいかもしれんけどね。手書き自体が減ってるから、手書きの行為自体は特別感があっていいと思うよね。
だからこそその身構えた感じで、ちゃんと読み手に向き合って書いてくれたんやなっていうのが伝わってくるんですよね、インクの染み込んだ感じから。相手の姿が見えるっていうか。
買ったはいいけど、万年筆ってどうやって持ち歩けばいいの?問題
さっきのスーベレーンを買った時の話なんやけど、買ったときに1番不安やったのが「これどうやって持ち運ぼう。」ってことやね。で、どうしようかと思った時に、その時はすでにCARDRIDGEdünn(カードリッジデュン)を作ってたから余り革があって。で、それをとりあえず巻いてみようってなって、巻いてたのが始まりかな。
そうですね、さすがに買いたての高級万年筆をペンケースに突っ込むのは抵抗ありますもんね。
そうそうそう。傷だらけのmontblanc(モンブラン)をよく見ることがあって、営業してる時に「こういうことってあるでしょう。万年筆とかを持ち歩いてたらボロボロになりますよね。」って言ったら、実際に出してくれた人がいて。その人はスーベレーンやったけど、結構ボロボロになってたね。それを見て、「それです、それを防止したいんです!」って言って…。そしたら「あー、なるほど。」っていう風に言ってくれたかな。だから、基本今のワンペンカバーはスーベレーンのM400専用に作られているようなもんやね。
それでも、だいたいの万年筆は入りますよね。
そうそう、革は伸びるしね。サイトのブログに実例としていろんな種類のやつをあげてるけれども、だいたい入るしって感じやし。
ネットから来てくれる人が多いからまとめ買いとかあるし、ありがたい話よね。ちょっと思ったけど、多分万年筆がほんまに好きやったら、あのデザイン、あの内容で作らへんかった気もするのよね。ロールペンケースの人たちもそうやけど、多くの人はクッション性とかいかに大切に大事に持ち歩くかを重視しはるから。
それを考えるとワンペンカバーは真逆の方向に行ってますよね。
そうそう、表面のみやしね。それでも何もしないよりマシやし、これを使うことで万年筆を日常にもっと落とし込んできて欲しいのかなっていう。それこそさっき言ったみたいな、昇進やお祝い、餞別とかでいい万年筆を初めて知った、手にしたというような人に使ってもらいたいな。『きまじめ姫と文房具王子』に出てきた姫路先生みたいな感じで、じゃあ試しに使ってみようっていう時に入れてくれたらいいんじゃないかな。
使わないでしまい込むより、気軽に持ち出してたくさん使ってもらった方が万年筆も喜びますよね。
極薄の本革一本差し「ワンペンカバー」に、太軸モデルが登場です。
で、ワンペンカバーはさっきも言ったみたいにスーベレーンのM400に合わせて作ったやつなんで、太軸は入りませんと。当然作ったら作ったで「太軸の万年筆を入れたい。」という声がたくさんあって、じゃあ作りましょうかって、ちょっと太めのやつを作ったっていう感じやね。対象の品番としてイメージしたのは、モンブランとかデルタのDOLCEVITA(ドルチェビータ)とか、そのあたりかな。それにしても太い万年筆って、存在感がすごいよね。
そうですね。なんであの太さになったんでしょう…。
重量バランスとかあるんじゃない?書きやすいとか。箔なんかなあ、どうなんやろう。
なんか圧倒されますよね、見ただけで。
値段も圧倒してくるよね。いやー、上には上があるわ。あと今回おもしろかったのが、ワンペンカバーってさ、丸いやん、断面が。平面を円にしたときの影響ってすごいでかいんやなって。
というのは?
横幅の長さが3mmしか違わへんねん。でも、3mm変えただけでめちゃめちゃ太くなる。
確かに、平面の時は見た目の違いがほとんどわからないです。
そうやねん。でも、ちょっと幅を広くしただけでも、丸めてみたらぶかぶかやんってなる。この平面のものを円にする時の差はすごいおもしろかったかなって。ギリギリまで調整してたかな、これに関しては。
調整の結果、3mm増やすのがベストだったということですね。
そうそう。これ以上になると大きすぎるっていうのがあったから。結果ちょうどよくなったんじゃないかなっていう感じやね。
持ち歩くのも面倒、一本差しスリーブの開け閉めも面倒。そんなものぐささんにもおすすめしたい。
今は?カバンに何本か入ってるの?
全く…。
あー、もう完全に持ち歩いてないんや(笑)
気持ちに波があるんですよね。書くときはめっちゃ書くんですけど、今はもう完全に私の中に水性ボールペンの流れが来てて。
でもさあ、日常で使ってないとインクが乾いて使えなくなるやん。
そうなんですよ。ちゃんとメンテナンスして…使うのが1番のメンテナンスっていうんで、毎日書いてちゃんとインクをペン先に流さないとって思ってはいるんですけど、気づいたらカラカラになってるっていう(笑)
やっぱりペンケースに入れなあかん。
そうですね…。そういうことを考えても、とりあえずワンペンカバーに入れてカバンに突っ込めるっていうところはありますよね。
ところで、ペンケースは今持ってるの?
ペンケースも…持ってないです。
ペンケースも持ってないの!?
リュックにペンを一本だけ入れてますね。ペンを挿すところがあるんで。
あー。じゃあもうそれだけなんや。
はい。ちゃんとペンケースを持ってた時もあったんですけどね、ちょっと前までは。私なにかといっぱい入れちゃう癖があって。ペンケースもカバンもパンパンになるんで重たくて、もうやめようって。今は必要なものは会社に置いて、出先で書けるようにちょこっとだけカバンに入れて、っていう風にしてますね。
ふーん。その挿すとこに、これ挿してみてよ。
あーそうですね。ちょうど入るかも。
こうやって入れときなさい、日々。
そうですね。本来そういうためのもんやなって思いますよね。っていうのも、結局私が持ち歩かないのって、いろいろめんどくさからなんですよね…。もはや、フタの開け閉めもめんどくさくて、一本差しの。
あー、あれね。
最初はちゃんと一本差しに入れてたんですけど、使う度に取り出してまたしまってっていうのが億劫で。そのうちむき出しで突っ込むようになってましたね。そういうずぼらな人の為にもおすすめですよ。これはスッとペンを通すだけでいいんで。
すごいこじつけ方やな(笑)
いや、でも実際そうですよ。ほんまにめんどくさいんですよ、一本差しのフタをいちいちキュッキュッキュッキュって出して。で、使ったらまたキュッキュッキュッキュって閉じて。
確かに、ワンペンカバー使っててめんどくさいと思った事はないわな。
もうだってあれ、ペンにキャップ挿すのとほぼ同じじゃないですか、感覚が。
確かに。
革が薄いからカバンの中で場所も取らへんし。ワンペンカバーは「万年筆を大事にしたい!」って思ってる方にもいいんですけど、私みたいな人にプレゼントしてもいいんちゃうかな、みたいな(笑)
せっかくもらった万年筆を使いこなせてない人に買って欲しいよね。
そうですね。大事にしなきゃっていう気持ちだけを持つんじゃなくて、もっとカジュアルに外に持っていってもらうためにも、むき出しで持つくらいやったら最低限これに入れとくといいよ、って感じで。
家に価値のわからない万年筆が眠っている人がいっぱいいそうやしね。
眠らせるぐらいやったらこれをつけて外に持ち出そうってことですね。「目覚めろ、眠れる万年筆よ」みたいな(笑)
→つづく
荒川×むーす 万年筆対談
【その1】万年筆初心者におすすめの一本って?買って気づいた、こんな「あるある」も
【その2】万年筆用カラーインクと化粧品の共通点とは?